スタッフ本間 数学連載 第19回 数学と建築のあいだ 其の2ギリシャ

数学について、賢人のことば

第19回は、数学と建築、其の2ギリシャです。

面白かったので、長めに引用してます。
★☆は捕捉とコメントです。

☆数学は、情報に数字や形を与えて、そして保存することができる
そして、それを再生し、他とくっついたり、離れたり。
☆ピラミッドから空へ、三角から球体へ、
神から天文学へ。


★古代人が自然界の秩序について考えたとき、
「オルペウス教的伝統」、「オリュンポス的伝統」の二つの体系があった。

(1)オルペウス教的伝統
・紀元前六世紀のおける宗教復興の特色をなした、神秘的で超越的な態度。
・宗教は時間的神話体系。
・オルペウス教的思考は、「存在していること」に対して、「生成すること」を象徴的に表現した。
ピュタゴラスとその弟子たちの宇宙生成論と化した。

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(2)オリュンポス的伝統
ホメロスの神観の特色である、人間的で内在的な態度。
・宗教は空間的神話体系。
・オリュンポスの神々は、「生成すること」に対立するものとしての「存在すること」の保護者。
イオニア学派の宇宙構造論となる。

★これら二つの秩序は共存しており、ともに人々によって表現されることを求めている。

★オリュンポスの宗主たるゼウスの上にも下にも、ギリシャ人が駆逐した母系社会のものである、より古い神々が存在する。
(大地母神ガイア、自然界の秩序であるディケ、社会秩序の擬人化であるテミス、分類の原理たるモイラなど)
「ゼウスのかたわらに座を占める、年古りたるディケ」と呼ばれる女神は、オルペウス教的の系統に属する神である。

☆ゼウスの登場と、数学との関係性を見ても面白そうデスね。
例えば、時間的神話体系、空間的神話体系が共存しているあたりに、数学を感じます。


以下、プラトンの「ティマイオス」からの言葉です。
数学のノミを使って、世界を彫刻しているような感じがします。

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「まず最初に次のような区別を立てなければならない。
常にあるもの、生成しないものとは何か、そして、常に生成し、決してあるということがないものとは何かということだ。
前者は、常に同一を保つので、理(ロゴス)とともに知性によって捉えられる。
後者は、生成消滅し、真にあるということが決してないので、理と合致しない感覚とともに思いなし(ドクサ)によって捉えられる。
さらに、生成されるものはすべて、必ず何らかの原因によって生成しなければならない。」

★在ることを始めることなく、何か過ぎ去るものもこれから起こってくることも有しないものは、出生(存在の始まり)を欠き常に在るのである。
このことは神の本質に合致する。
神の本質は存在の始まりも有しなかったし、時間の推移も有しなかったからである。この神の本質が宇宙の始動因である。
この同じことは神の知に合致する。
神の知は存在の始まりも有しなかったし、時間の推移も有しなかったからである。
神にとって、在ることと知を有するものであることは同じである。
この神の知が宇宙の形相因である。神の知にもとづいて、創造主は宇宙を形づくった。

★知性によって捉えられる実在(イデア)と、思いなされる生成とが区別される。
★理性の導きにより知性によって把握されうるもので、常に同一であるものと、非理性的な感覚のともなう意見によって把握されうるもの。

「宇宙は生成したものである。
なぜなら、それは見られるもの、触れられるものであり、身体(ソーマ、物体という意味もある)を持ったものであり、こうしたものはすべて感覚されるものだが、感覚されるもの、つまり、思いなしによって感覚とともに捉えられるものが、生成するもの、生成されるものである。」

プラトンが宇宙を指す言葉には、ウラノス(天)、コスモス(飾り、秩序)、パン(万有、全体)がある。
☆宇宙を身体とすると、人はその臓器の一部であるような感覚になります。
そこに共通のゲノムを思ったり。

「永遠に目を向けたのは誰にも明らかである。
宇宙は生成したものの中でもっとも立派なものであり、創り主はおよそ原因となるもののうち最善のものだからである。
そこで、宇宙はこのように生成したので、言論(ロゴス)と思慮の働きによって把握され、同一を保つものに目を向けて制作されたのである。
また以上のようなら、この宇宙が何かの似像(エイコーン)であることは、大いに必然のことである。」

★宇宙についての理解は「像」、すなわち宇宙の原型の像である宇宙「の見せかけであり、理性の模写」、すなわち神の理性のみが真の意味で理性であり、人間の理性はその模写であるがゆえに不完全な理性「として」うわべだけのものである。
諸行無常や一座建立と似てるような、違うような。

「永続的で確固とした、知性によって明らかにされるものについての言論であれば、言論も永続的で不変のものだが、
言論が、かのモデルに似せて作られているが似像でしかないものを対象としている場合には、言論の方も先の言論との比例関係で、真実らしい(エイコース)言論でしかない。
つまり、「なる」(生成)に対する「ある」(実在、有)の関係が、「所信」(思いなし)に対する「真実」についての関係と同じなのである。」

「したがって、こうしたことについては、真実らしい話を受け入れ、それ以上は何も求めないのがふさわしい。」

プラトン的観念論。
われわれが現実に見ている世界の奥には恒久普遍の理想の世界があり、したがって、感覚世界の事物はその影にすぎない。
見えているものを超えてその奥の意味を暗示するために象徴が用いられる。
★象徴の形式は、寓意(アレゴリー)、隠喩(メタファー)、擬人化(パーソニフィケーション)、象徴的付属物(アトリビュート)など。
☆世界は真実らしい、らしさで精一杯?

「宇宙は、他の生きものすべてが、個別にも類別にも、それの部分であるようなものに、何にもまして一番似ていると考えよう。」

☆神は細部にも宿っている?或いは、痕跡のようなものがある?

「昼と夜、月や年の循環や、春分秋分夏至冬至を見ることができたからこそ、数が創り出され、時間の観念と万有の本性についての探求がわれわれに与えられたのである。」

☆神から人の感覚を通じて数が伝えられた?
★宇宙は常にあったのか、永遠から時間があり、宇宙もあったのか
それとも宇宙は時間から起源を得たのか、時間において起源をもち、そのため時間が宇宙に先行したのか。

「神はこれを初めて形と数を用いて形作ったのである。
そして、神がそれらのものを立派でも善くもなかった状態から、可能な限り立派で善いものになるように構築したということ、これだけは何をさしおいても、いつでもいわれるものとして、われわれは前提しておこう。」

☆もやもやしたものに、神様が形と数を与え世界を形作ったとすると、幾何学と数論には、その時の秘密を解く何かがありそうです。
☆その結果、形と数ができたのか、或いは、形と数という入れ物が先にあったのか?いずれにせよ、世界にとって形と数があった方が心地好かった?


ソクラテス!もどうぞ。

「正義とは、最も力のない者にとって、最も役に立つものである。

★正義には、実定的正義と自然的正義がある。
実定的正義は国家の制度に関して特に現れ、自然的正義は特に宇宙の創造について現れる。
☆正義の探究に関心が向けられていました、正義を、見出した神の知を愛することと読み替えても良いと思うのですが、
プラトンティマイオスの中で、自然的正義について論じています
ギリシャ人の精神の発展において、個人の意識が社会集団の全体的意識から次第に超脱していった。

☆この時、数学の土俵も変わったのかもしれませんね、、、


ご参考

ティマイオス/クリティアス」プラトン著、岸見一郎訳、白澤社
「中世思想原典集成 精選4 ラテン中世の興隆2」上智大学中世思想研究所 編訳・監修
「ヘシオドス 神統記」廣川洋一訳、岩波文庫
「イメージの歴史」若桑みどり著、ちくま学芸文庫
「古代芸術のコスモロジー 神話と寓意表現」ロジャー・ヒンクス著、沓掛良彦安村典子訳、平凡社
「西洋の建築 空間と意味の歴史」クリスチャン・ノルベルグ=シュルツ著、前川道郎訳、本の友社
「哲学の歴史 第2巻 帝国と賢者」内山勝利責任編集、中央公論新社