スタッフ本間 数学連載 第18回数学と建築のあいだ 其の1エジプト

数学について、
第18回は、数学と建築とのあいだ、其の1エジプトです。

建築物や都市、そして文明は数学っぽい。
人が造ったものはなぜそうなるのか?
なぜかは分かりませんが、その周辺を少しのぞいてみます。

面白かったので、少々長めに引用してます。★☆は捕捉とコメントです。


★比例★
エジプト人は石や壁面を同じ大きさの正方形のこまかい網目で細分した。
この細分を彼らは人間の表現だけでなく、彼らの美術に大きな役割を演ずる動物の描写にも用いていた。
エジプトの網目模様は転写的意味ではなく、構成的意味をもっている。
その有用性は、寸法の確立から運動の明示にまでわたっていた。
エジプト人によって作られた人物像は、人間の機能ではなくて、形をいっそう永続的な写しによって再現している。

☆同じ大きさの正方形の網目からスタート!まるで方眼紙、座標系、そこに数学が潜んでます。
☆数学から表現へ展開。
☆構成、寸法、運動。これは科学、力学?☆人間を機能でなく形としてとらえる、形から入るのは幾何学


★建物★
エジプトの建物は、囲われた<オアシス>、耐久的な巨石のマッス[量塊]、直行的秩序および通路もしくは軸、という四つの基本的志向の総合を表している。
これらすべては、象徴的に現れており、一体となってエジプト人宇宙の明確な再現を構成している。
また、<秩序>と<恒久性>とがエジプト建築の基本目的を示している。
☆石→幾何学的な塊+大きさや量→象徴、神様へ。
☆俯瞰すると、そこにリズムや座標、そして宇宙が現れる。

★★ルクソール神殿★★

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★★アメン神殿★★

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★地形、気候★
単純で規則的な地理構造をもった国。
砂漠が、長くて幅の狭いナイル渓谷の両側にある。
全体にわたって比較的均一な性格をもった縦長のオアシスである。
気候は乾燥して安定しており、ナイル河が規則的に氾濫するのとあいまって、それは永遠なる自然の秩序を明示するかのよう。

特殊な個別的な性格をもったいろいろな場所が、早い時代から地方の神がみに帰属させられていた。
☆単純、均一、規則的な自然の秩序→数学で扱いやすい。
☆特殊←→神様を感じる、神様のせい?


★文明のはじまり★
遠い昔、人間の心は、命令を下す「神」と呼ばれる部分と、それに従う「人間」と呼ばれる部分に二分されていた。
<二分心>が生み出した社会組織こそが文明の発祥を可能にした。
重要な人の亡骸をあたかもまだ生きているかのように埋葬する習慣は、古代文明のほとんどすべてに共通している。
この慣習は、死者の声が生きている者に相変わらず聞こえており、その声がそういう葬り方を求めていたのだと考える以外には説明がつかないのではないか。
その声が生きている者に幻聴として届いた、これら死せる王たちが、最初の神だったのだろう。
☆人間の中から聞こえてきたのか、或いは、どこか遠くから聞こえてきたのか。
形ができて文明になる。ここでは数学も形を与える1つのツール?
或いは、数学の目や耳が反応したのでしょうか。
☆古代象形文字(ヒエログリフ)を見ていると、お経のような、不思議なリズムを感じます。
まるで、絵と文字と声と数学が別れていないような。

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★ピラミッド★
大ピラミッドは、ファラオの墓ではなく、オシリスの墓である。
その比率は、大地を測量し、春分秋分に太陽が描く偏差円によって計算されている。
時至れば、太陽と月がちょうどピラミッド頂上に来るように設計されている。
太陽神は、傾いてゆきながらピラミッドの胎内に隠れるかの如く見え、そのままそこに閉じ込められる。
そして翌年の春になると、また同じ位置に、同じ時刻に出現する。
オシリスは、毎年死者の国から復活する。
大母神イシスも、春になると真夜中にまた現れる。
☆太陽と月とピラミッド、人と神様。
ピラミッドの形は外に開いている?
登るだけでなく、外から見る視点も持っていたのだろうか。
☆ピラミッドの形。例えば昆虫の脚は、細長い円柱形をしている。
厚さがどの方向でも同じになるのは円であり、円には弱い方向がない。脚の断面は円形がいい。
安定を考えると円、重力の影響を受けると三角形?似た形は山?

★★ギーザ。クフ王のピラミッド★★

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★イシスとオシリス
イシスとオシリスがエジプトの二主旨神で、エジプトの全神学はこ両神を主軸にして成り立っていた。
彼らはあらゆる異教の神々でもあり、男神・女神を問わず、個々の神々はすべてイシスとオシリスの特殊様態にすぎない。
オシリスが純粋な光であれば、イシスの支配力は、昼と夜、生と死、水と火、始まりと終わりを交互に受ける地上の全物質に及んだ。
☆イシスとオシリスは、この後どこに遠征するのでしょうか。


ご参考

バルトルシャイティス著作集3 イシス探究」ユルギス・バルトルシャイティス著、有田忠郎訳、国書刊行会
「西洋の建築 空間と意味の歴史」クリスチャン・ノルベルグ=シュルツ著、前川道郎訳、本の友社
「視覚芸術の意味」アーウィンパノフスキー著、中森義宗訳、岩崎美術社
「ウニはすごい、バッタもすごい」本川達雄著、中公新書
「神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡」ジュリアン・ジェインズ著、柴田裕之訳紀伊國屋書店