スタッフ遠藤より 本の話

ご無沙汰しています。遠藤です。

気がつけば五月ももう終わりに近づいています。

ついこのあいだ春の匂いを嗅いでいた気がするのに、時間というのはいつも、こちらの準備なんておかまいなしに先へ進んでしまいます。

僕らはただ、そのあとを少し遅れて歩いていくしかありません。



今日は、最近読んでいる本の話をします。「はてしない物語」です。

小学生の頃に読んだきりでした。

でもある日ふと、あの物語の空気をもう一度吸い込みたくなった。

そんな気分になったんです。

もちろん今なら、Amazonで検索すれば数秒で手に入るのでしょう。でもそういう問題ではなかった。



この物語は、主人公のバスチアン少年が古本屋「コリアンダー書店」で一冊の本に強く惹かれるところから始まります。だから僕も、できればちゃんと本屋で見つけたかったんです。偶然に見つける、という行為そのものが必要だった。



探していたのは岩波書店のハードカバー版でした。

深い赤銅色の装丁に、二匹の蛇が絡み合った模様。作中に登場する「はてしない物語」の本を、ほとんどそのまま現実へ持ち出したような美しい本です。ただ机の上に置いてあるだけで、部屋の空気が少し静かになる。

そういう種類の本って、たまにありますよね。



だから出先で本屋を見かけるたびに、ふらりと立ち寄っていました。

岩波書店の棚、海外文学の棚、児童書の棚。けれどどこへ行っても並んでいるのは新しい本ばかりでした。

1982年の本なんて、まるで最初から存在しなかったみたいに。



それでも、ある日とうとう見つけました。五反田の小さな本屋でした。

児童書の棚の隅に、その一冊だけがひっそりと差し込まれていた。

本は縦ではなく横倒しに近い格好で入れられていて、背表紙すら見えていなかった。

でも象牙色の箱だけが、妙に静かな存在感を放っていたんです。

僕はそれを見た瞬間、「ああ、これだ」と思いました。たぶんバスチアン少年も、あんなふうに本に呼ばれたんじゃないでしょうか。

もちろん、そのままレジへ持っていきました。



今、少しずつ読み進めています。

懐かしいです。

けれど不思議なことに、昔読んだはずなのに覚えていない場面がたくさんある。

逆に、子どもの頃には気にも留めなかった一文が、妙に胸に残ったりする。本を読み返すというのは、結局のところ昔の自分と再会することなのかもしれません。



もし時間があれば、皆さんも昔好きだった本をもう一度開いてみてください。思い出は案外、紙の匂いと一緒に保存されているものです。

最近は夏みたいな日が続いていたのに、急に冷え込んできました。どうか風邪などひかれませんように。

この日の教室の様子。