数学について、賢人のことば。
第15回は、数学と近代絵画とのあいだ、其の1です。
自然と数学と芸術(絵画)を並べて見てみましょう。
★☆は捕捉とコメントです。
芸術作品というものが美しいのはひとえにその真理によってである
(シェリング)
★ルネッサンスやバロックまでは、主題性や物語性のある逸話的な
光とは実際、単なる現象にすぎない。
あらゆる色彩はそこに含まれているのだ。
この現象は密度の感覚を与え、事物を他のものから見分けるという
(ウジェーヌ・ドラクロワ)
☆光、色彩、現象そして感覚へ。
画家個人の感覚から真理へ。
★★タンジールの狂信者たち(1837年)、ドラクロワ★★
線描とは形ではない
形の見え方なのだ
自然が相手でも構成は必要だ
(エドアール・マネ)
☆構造ではなく、構成。
★マティスはマネについて、彼は反射的に動いて画家の仕事を単純
★印象派の出現に至って、観念から感覚への飛躍を完了した。
世界は、色の反映と波動との限りない多様性となり、物に固有な色
★印象主義者の技術上の難問題は、色彩を彼らの基本的な明るさの
色を明るくするか、ぼやけさせるかによって、外気は色になり、光
★★笛吹く少年(1866年)、マネ★★
★★鉄道(1872-1873年)、マネ★★
★★海辺にて(1873年)、マネ★★
我々の芸術は、自然のあらゆる変化の諸相、諸現象と併せて、持続
自然界のあらゆる物象は球体、円錐体、円筒体に応じて形どられて
(ポール・セザンヌ)
☆マネは形の見え方と言ってましたが、自然と持続、そこに数学を
★★サント・ヴィクトワール山(1902年以降に制作されたもの
自然には、手触りを感じ得る空間がある。
静物に手が届かないとき、それは静物であることをやめるのだ・・
(ジョルジュ・ブラック)
☆光、色彩から物、空間に対する感覚へ。そこにセザンヌの手触り
★色彩とフォルムの領域でのブラックの発見は、幾何学の内在的意
★ルネッサンス以来、自然対象を再現してきた描写絵画の崩壊の過
★★レスタック風景(1908年)、ブラック★★
★★マンドーラ(1910年)、ブラック★★
★西欧の絵画はルネッサンス期に遠近法が誕生して以来、二次元の
ここでは空間はつねに不動のものとみなされ、また空間のなかの対
★★最後の晩餐、ダヴィンチ★★
キュービストは、もっと本質的に、対象の多様な様態を表現する必
ピカソの絵画空間の分析は、対象経験を正確に表現しようとした努
だから、これらは互いに深く影響しあっているのたが、つねにエキ
(モホリ=ナギ)
☆多様、無限、時間。多くのことが含まれていますね。
★★テーブル(1910年)、ピカソ★★
★★ポートレート(1913年)、ピカソ★★
空間の把握はもはや有機的なものではなく、造形的、合理的なもの
これらの危機をいやす手段は生命の内的な合法則性の新たな洞察に
(アルベール・グレーズ)
★画家が自己特有な物の見方によって自分自身を正当化せざるをえ
★ブラックやピカソの場合には描写対象や空間のデフォルメの際に
☆物と欲望、個人と集団、第1次世界大戦(1914年~18年)
★★風景(1910年)、グレーズ★★
★★帆船(1916年)、グレーズ★★
☆自然→→→絵=感覚+構造(数学?)
数学っぽいものが、表現手段としてちらちら見えていましたが、こ
想像力の奔放な活動と力は、私達が自己を忘れて精霊に取り憑かれ
想像力は絶えず外的自然によって英気を養わなければならない。
(ジョン・ラスキン)
ご参考
「世界の名著 続9」岩崎武雄責任編集、中央公論社
「ウジェーヌ・ドラクロワ」ジル・ネレ著、TASCHEN
「エドアール・マネ」ジル・ネレ著、TASCHEN
「ポール・セザンヌ」ウルリケ・ベックス=マローニー著、TAS
「新潮美術文庫 43 ブラック」串田孫一著、新潮社
「ザ ニュー ヴィジョン」モホリ=ナギ著、大森忠行訳、ダヴィッド社
「バウハウス叢書 キュービスム」アルベール・グレーズ著、貞包博幸訳、中央公論美
「マルセル・デュシャン全著作」ミシェル・サヌイエ編、北山研二
「構想力の芸術思想」ジョン・ラスキン著、内藤史朗訳、法藏館